As well be hanged for .....
第22章 エピローグ
顔を合わせれば毎日毎日飽きもせず始まる舌戦。
まだ、手が出ないだけましか。と執事は黙って、主のために紅茶の準備を着々と進める。
激しく言い争いをしている二人。
どちらかと言うと、犬も食わぬ言い争いなのだが、厄介なことに本気で言い合っているので、止める方も一歩間違えば地雷を踏みかねない。
紅茶が良い香りを立て始め、カップに注いだ紅茶を、争うとわかっているのに隣同士に座る少年と少女の前に差し出して一言。
「今日も、仲がよろしいですね。」
それがさらに油に火を注ぐことになると知ってだ。
止む事のない言葉の槍が、自分に向かぬようにと執事は黙ってこの場を離れる。
離れたところで、後5分もしないうちに呼ばれるのだろう。
約束の時間に間に合うようにスピードを出してちょうだい!と吠える少女の声が頭の中で再生された。
「セバス!いくわよ!遅刻したら大変!」
「お前が僕を起こさないから悪いんだろう!」
「なによ!昨日の夜、自分で起きて見せるって言ったのはシエルじゃない!」
「その後に、私が起こすから大丈夫。って言ったのはウリエだろう!」
「…そんな事言ったかしら?」
「言った!」
知らず知らずのうちに上がる口角は、どうにも抑える事は出来ないようだ。
こんなに煩い毎日も悪くはないと思ってしまうのは、 "明るい"と言う言葉に背徳感を感じるからだろうか。
セバスチャンは赤い瞳の二人の主に、口癖になってしまった馬の耳に念仏のお小言を、鼻歌のように披露してみせる。
「遅れてすみませんね。レオーネン様。」
「まったくだ。」
(毒を喰らわば皿まで)