As well be hanged for .....
第21章 良き母はふしだらに 猫は不自由に 後編
「貴女が。私のかわいいパピーね?」
右へ左へと自由に転がる鈴の音の様な声。
ウリエの事を子犬と呼んだ人物、白いドレスの女王。
ウリエはその場に膝をつき、女王に従う忠誠心の強い犬を演じる。
「お初にお目にかかります。」
「はっはっは。見せかけの礼は見苦しいですな。」
「いじめないでエドガー。この子は私のパピーよ。」
「はっ。申し訳ありません女王陛下。」
おかしいことはない。
エドガーがここにいて、女王サイドの人間である事は何もおかしい事ではない。
ウリエは膝をついたまま、エドガーの白い革靴のつま先を睨みつける。
政府と政府の犬は、いつの間に強いつながりを作っていたのだろう。
「ねぇ、私のパピー。」
「はい。」
「滑稽だと思わない?子犬がケージの中でコロコロと転がって遊ぶ様子は。」
女王からウリエに掛けられた言葉は、今までの働きを褒めるものでもなく、顔を上げる無礼を許す物でもなかった。
言葉に詰まったウリエは、ただ黙って頭を垂れ続ける。
「どういう躾をしようか迷うものよね。その子が食べる餌だって飲み水だって全部私が決めるの。」
楽しいわよね。とコロコロ笑う。
ひとしきり楽しそうに笑ってまた言葉を紡ぐ。
「何でも私が決めるの。だから、新しい子を飼うのも私の勝手。」
エドガーは新しい番犬だ。
だからここにいる。
ウリエは無防備に彼女らの前に晒されたうなじに、突き刺さるような視線を感じる。
「仲良く出来る?私のパピー。」