As well be hanged for .....
第21章 良き母はふしだらに 猫は不自由に 後編
夕刻、今日初めてウリエの顔を見た時には既に出掛ける準備が整っていた。
第一声が昨日の事を恥ずかしがる言葉でも、歯の浮くような甘い言葉でもなく。
「あら。まだ準備してないの?置いてくわよ?」
だった。
確かにそろそろ準備をして車に乗り込み、本邸へ向かうにはいい時間。
あまりにもいつも通り過ぎるウリエに、シエルは昨日の事は夢だったのでは?と疑った。
だから少しからかう。
「一度も顔を見ていなかったから、ベッドから起き上がれないのかと思った。」
「随分自信があったのね。貧弱悪魔のくせに。」
「貧弱悪魔の下で嬉しそうに乱れていたのは何処のどいつだ。」
「もちろん私よ?何か文句があって?」
「強がりか?」
「夢でも見ていたんじゃない?」
エメラルドの瞳を細めてこちらを睨みつけてくるウリエ。
両手を腰に当てふんぞり返る彼女の首には、サファイアのチョーカーが光っている。
言葉とは裏腹に、昨日の事を忘れないようにするため、自分で自分に首輪を付けているようにも見えた。
シエルはすぐにセバスチャンを呼んで支度をさせる。