As well be hanged for .....
第20章 良き母はふしだらに 猫は不自由に 前篇
塞がれた唇は妙に熱くて、何処かへ飛んで行っていたドキドキが慌てて戻ってきた。
ちゅ。と離れた唇はまたすぐに塞がれ、呼吸をすることすら許してくれない。
前とは違う探るようなキスじゃない。
いつもの優しいシエルじゃない。
でも、不思議と怖いとは思わなかった。
「抵抗しろって、いってくれない、のね。」
ようやく解放された唇から、慌てて言葉を捻りだす。
いつの間にか、自分に馬乗りになっていたシエルの表情は暗くて見えない。
けれど、その赤い瞳が自分を射抜いている事だけはちゃんとわかる。
「黙ってろ。それだけだ。」
「悪魔。」
「あぁ、僕は悪魔だ。」
シエルの手が、自分の体を這うようにまさぐる。
すべてをその手で見るために、唇で感じるために。
シエルはウリエに一つの抵抗も許さなかった。
「おはようございます、ぼっちゃん。」
「……。」
「おはようございます。」
「……。」
「ぼっちゃん?」
「なんだその笑顔は、気色悪い。」
(良き母はふしだらに 猫は不自由に 前篇)