As well be hanged for .....
第20章 良き母はふしだらに 猫は不自由に 前篇
冗談とか話のネタにとかそういう雰囲気ではなかった。
先ほどよりも鋭い視線でウリエをほとんど睨みつけるシエル。
「…いないわ。いなかった。だって、シエルがいたらもっと違う未来だと思うから。」
「……。」
「シエルが、ずっと側にいてくれるなら。嬉しいけど…想像がつかないの。」
何か言わないとシエルが今ここからいなくなってしまいそうだった。
繋いだままの手にぎゅっと力を入れ、そこにシエルがいる事を感じる。
「考えたことなかった…これからもずっとシエルといられるなんて絶対にあり得ないと思っていたから。あなたと出会った時から、私はいつか死ぬから。と……。」
もし、本当にこれからもずっと、シエルと今までの様な生活が出来るのなら。
今この時を止めたいと思うほど楽しい。
「死にたくないとは思わないのか?」
「あんまり。シエルのものになれるのなら、怖くない。」
本心だ。
それ以上もそれ以下もない。
ウリエはエメラルドクリーンの瞳で、強くシエルの赤い瞳を見つめる。
「お前、随分大胆な奴だな。恥ずかしげもなく、よくそんな事が言えるな。」
そういう意味じゃない!という抗議の言葉はウリエの口から洩れてくる事はなかった。
唐突に動いたシエルに、言葉を紡ぐ事を許されなかったからだ。