As well be hanged for .....
第20章 良き母はふしだらに 猫は不自由に 前篇
温かくも冷たくもないシエルの手。
その手の感覚に、以前彼のベッドにもぐりこんだ時の事を思い出し、段々と恥ずかしさがせり上がってくる。
でも、今この手を拒否すれば、もう二度と自分に触れてくれなくなるのではないか。と不安になる。
もっともっとと求める自分と、恥ずかしいからやめてくれと、相反する心が押し合いへしあいをしていた。
「お前は…」
「なに?」
暗闇の中でシエルの赤い瞳がぎらついて見える。
美味しそうなお菓子を見るような、火照った視線。
ウリエの心臓がバクバクと音を立て、その音はシエルにも聞こえているのではないかと思うほど大きい。
「もし、このまま生きて行くとしたら、どうする?」
シエルの唐突な質問の内容に、さっきまでのドキドキが一瞬で無くなった。
あぁ、自分はきっと今晩襲われて、大人の女性になるのだろう。
と思っていたさっきまでの自分がひどく恥かしい。
「…このまま、生きるなら?」
若干の怒りを抑えながら、とりあえず言葉を絞り出す。
「あぁ。僕に食われないでいたらどうする?」
「うーん…そうね、人並みの人生じゃないかしら?仕事して、それなりの人と結婚して、子供を育てて…っていう。」
「幸せか?」
どうしてシエルはそんな事を聞くのだろう。
悪魔のくせに、幸せな未来を考えるとは、元人間だからなのだろうか。
「想像なんだから大抵幸せな事を考えるわよ。不幸になる事を想像する人間はいないわ。」
「そこに、僕はいるか?」
「え?」