As well be hanged for .....
第20章 良き母はふしだらに 猫は不自由に 前篇
「ねぇ、シエル。」
ようやく肩の力が抜けたのか、彼女はもぞもぞとシエルに体を向け、そのエメラルドの瞳で彼の横顔を見つめる。
「私を食べるって、どうやって食べるの?バリバリ頭から食べるの?」
「いや……その。」
言葉を詰まらせ、うーん。と悩むシエル。
ウリエは今更になって、魂を食べるとは一体どのような事なのだろうかと、興味が湧いた。
「食べる…と言うよりは、吸う?抜き出す?と言った方が正しいのか?」
「吸血鬼?」
「いや、血は吸わない。言葉では説明できない。」
じっとこちらを見つめてくる好奇心旺盛なウリエの瞳。
シエルは頬に感じるその視線に耐えきれず、顔と体を彼女に向けた。
「痛くはしない。」
「苦しくも?」
「あぁ……なるべく。」
なるべく?とクスクス笑うウリエ。
もう、この笑顔を見る事が無くなるのか。とシエルは彼女の頬に手を伸ばす。
彼女はただ黙ってシエルの手を受け入れる。
「くすぐったい。」
「我慢しろ。」
優しく、まるで壊れやすいガラスでも撫でるようにシエルはウリエの頬を撫でる。