As well be hanged for .....
第4章 砂糖は多めに 塩は少なめに 前篇
そのテレビには日本製の最新ゲーム機が繋がれており、今まさにシエルが遊ぼうとしていたようだった。
「一家惨殺事件。」
「そう言えば、一昨日も同じ事件があったわね。」
「きっと仕事になるんじゃないか?」
ウリエの手にはシエルの手の感覚、冷たい訳でも触れていない訳でもない。
しっかりとそれなりには温かいし、握られている感覚は幻ではない。
「ねぇ、シエル。どうして廊下に出て来たの?」
「ウリエを探しに行こうとした。この事を伝えようと思って。」
言葉を考えている様子ではなかった。
ウリエは、もしかしたらシエルとセバスチャンが自分にしか見えない幽霊かもしれないと考える。
その自分の心がシエルに読まれてしまったのではないかと、ドキリと高鳴った。
「そうだったの。」
アナウンサーが読み上げるニュースの原稿からは、連日似たような言葉しか聞こえてこない。
ウリエの番犬である故の心の揺らぎを、契約を結ぶシエルは握る彼女の手から強く感じる。
ウリエの心が揺らげば、シエルが彼女に感じていたあの甘美な匂いはブレる。
また、ひとつ、悪魔としての発見を楽しんで、シエルは彼女の美しい緑の瞳を覗きこむ。
「街に出れば、疑問を解決する糸口が何かあるかもしれないな。」
どうして自分は、彼女を焚きつけるような言い方しか出来ない。もっと素直に、彼女の憂いを晴らしてやれるような事を言う事が出来ないのか。
「そうね。」
いつもシエルの赤い瞳を挑戦的に睨み返してくるウリエの緑の瞳は、今は一度も会わせられる事は無かった。