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As well be hanged for .....

第20章 良き母はふしだらに 猫は不自由に 前篇




優雅にイスに座って事を見守っていたウリエを、その場にしりもちをついたまま睨むシエル。
ウリエは放り出していた模造刀をもう一度掴み、シエルに突き付けた。

「もうちょっと出来るようになったら、私が相手してあげるわ。」
「ふん。すぐ追いついてやる。」
「どうかしら。」

何をしても、していなくても、どうしてかぶつかり合うこの二人。
セバスチャンは三人分の模造刀を片付けながら、ため息を漏らす。
そろそろティータイムの時間だが、今日の戦争はこれで何回目だろう。と心の中で指折り数えてしまう。

「ぼっちゃん、お嬢様。今日のおやつはガトーショコラです。お行儀よくダイニングでお待ち下さい。」

可愛らしく了解の返事が返ってくるのだが、注意を促した所で、ダイニングテーブルの端と端で、言葉の槍を飛ばしあって戯れるのは考えなくとも想像が付いた。

しかしもう、ここまで来るとむしろこの二人が自分の言いつけをきっちり守って、素直に仲良く喧嘩せず「マテ」をしている方が気持ち悪い。
そんな事をされれば、どちらかが熱を出して頭のネジが飛んでしまっているか、はたまたマインドコントロールなるものに引っかかっているのでは?と深く疑うだろう。

キッチンカーに切り分けたガトーショコラと、良い香りのする紅茶を乗せ、フォークやはちみつ、ミルクなど、必要そうなものをすべて乗せる。
そんな事をしながら、段々と激しさを増す二人の小競り合いにセバスチャンは思わず笑みがこぼれる。
まったく、あの二人は。

「お待たせいたしました。」

おそい!と自分が叱られる事はない。
だって、二人は何も仲が悪くて喧嘩をする訳ではないから。
一分一秒を惜しむように、たくさんの言葉を交わし、じゃれあい、人目もはばからず戯れているのだから。
邪魔をするな、と言われているような気にもなる。

「おいしい。セバスのおやつはいつも美味しい。」
「あたりまえだ。僕の執事だぞ。」
「あら、べつにセバスはシエルの執事じゃなくったって、美味しいお菓子は作れると思うわよ?」
「味を教えたのは僕だ。」
「あっそ。」

その証拠に、二人の眉間にしわなど一つもありはしない。

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