As well be hanged for .....
第20章 良き母はふしだらに 猫は不自由に 前篇
「え?シエルも剣のおけいこするの?」
「悪いか?」
「悪いとは言ってないでしょう。必要ないって言ってたじゃない。」
「興味が湧いた。」
模造の剣をセバスチャン相手に振っていたウリエが、珍しく見物に来たシエルの手に同じく模造の剣が握られていた事に驚いたのだ。
もちろんセバスチャンの入れ知恵ではない。
シエルが自身に欠けている、他人を守る力、の特訓を始めようと言うのだ。
「セバスチャン。ウリエの相手が終わったら僕に稽古をつけろ。」
「ふふふ。よろしいですが、私は厳しいですよ?」
「構わない。」
模造刀とはいえ、それなりの固さと重さがある。
体に当たればもちろん痛い。
「では。次はぼっちゃんです。」
タオルで汗を拭ってウリエはシエルに場所を譲る。
イスに身を投げ、型はしっかりと整っているシエルの構えを見つめる。
ほとんど初めて見ると言ってもいいシエルの剣。
楽しそうに剣を構えるセバスチャンと堅く緊張して剣を構えるシエルを、ウリエは少しワクワクしながら観覧する。
「脇が甘い!」
「…くっ。」
先ほどのウリエとセバスチャンの打ち合いの様な素早さと切れはないが、幾分かシエルも健闘しているように見える。
セバスチャンは手を緩めわざと隙を作って見たり、逆に激しく攻めてみたり、と的を射た指導を続ける。
しかし、シエルには元々の体力がなくすぐにへばってしまい、結局シエルの剣のおけいこは30分ともたなかった。
「もう腕が上がらないの?悪魔のくせに貧弱ね。」
「ハァ、ハァ。お前と違って僕は頭脳派だからな。」
「…馬鹿にしてる?」
「してる。」