As well be hanged for .....
第19章 勝利は未熟に 死は盲目に 後編
明日、明後日になればシエルは元気になる。
だから自分は待つだけでいい。
頭では理解していても、どうしても今、シエルの無事をこの目で確認したい衝動が収まらない。
このままでは眠れそうにない。
ウリエはそっとベッドを抜け出し、肌寒い廊下にネグリジェのままで静かに飛びだす。
きっと、セバスチャンに見つかったら叱られる。
抜き足差し足、でも、急いで。
シエルの部屋の扉は簡単に開いた。
するりと中に忍び込めば、眠らないはずの悪魔が、ちょっとだけ苦しそうな寝息を立てて眠っていた。
そっと近付いてベッドを覗きこむ。
「シエル……」
眉を寄せて寝苦しそうにするシエル。
ウリエの呟きが聞こえたのか、シエルの瞼がゆっくりと開き、赤と紫の瞳がこちらを見つめた。
「ウリエ…?」
「ごめん、来ちゃいけないって言われてたんだけど。」
「いい。」
ウリエは恐る恐る手を伸ばし、彼の頭をゆっくりと撫でる。
「怪我はないか?」
「ないわ。あの時シエルが庇ってくれたから。」
「よかった。」
あの時、トーマスがウリエの剣を抜いた瞬間。
シエルはウリエを突き飛ばし、痛くない訳ではないと言うのに体を張って彼女を守った。
セバスチャンですら動けないほどの一瞬。
シエルは無我夢中で彼女を守ったのだ。