As well be hanged for .....
第19章 勝利は未熟に 死は盲目に 後編
「……。」
エドガーは大人しく引き下がる。
この事件は、熱心なストーカーがこの屋敷に押し入り、正当防衛でこの屋敷の誰かが発砲し殺した。と言う体で決着が付くだろう。
誰かが。と表現するのはあの悪魔の二人は人間ではないからだし、ウリエが、気が動転していてあの時のことを誰も覚えてはいない。と証言したからだ。
マスメディアにも規制が掛かる事だろう。
「エドガー。あらかた終わったのなら早々に引き揚げてくださいね。今、ここに病人がいるの。静かにしていただきたいわ。」
「えぇ…承知しました。」
自分が手塩にかけて、一流の〝警察官″に育ててやろうと誓った部下が。
あんな形で死ぬなんて。
いや、死は誰にでも平等に、どんな形であれ訪れる。
刑事の仕事は、大胆に犯人を捕まえる事ではない。
そのほとんどが、緻密に慎重に繰り返される捜査と裏付け。
日本の忍者のように犯人の陰に潜み、決定的な証拠と、絶対的な隙があるまでじりじりと待つ。
こんな大それたストーカー行為、自分がトーマスに教えて来た、耐え忍び待つ大切さは何だったと言うのか。
手に入れたいと願った相手を手に入れるには、罠をかけ慎重に接触し、一つ一つ相手の心のトビラを開けて行くしか、正しい方法はないと言うのに。
何処のボタンを掛け違ったと言うのだろうか。
エドガーには知る由もなかった。
「おら。引き上げるぞ。」
しかし一体。
どうやったらこんな簡単に壁が壊れるのだろう。
この屋敷にいるのは、非力そうな人間ばかりだと言うのに。