As well be hanged for .....
第19章 勝利は未熟に 死は盲目に 後編
どちらが悪魔か。と議論が出来そうなほど崩壊した顔面のトーマス。
火事場の馬鹿力か、トーマスは後ろ手に拘束され、セバスチャンに押さえつけられていた腕を無理やりに解き、ウリエの手にあった剣を抜き、前へと突き出した。
「死ね!お嬢様を解放しろ!悪魔!」
びちゃちゃ!と血飛沫が飛び散った。
誰もが息を止め、その瞬間を目に焼き付けた。
すぐに、ダァン!と銃声が響き、我に帰る。
「シエルッ!シエル!」
「ぼっちゃん!」
硝煙の上がる銃はウリエの手に。
既に捨てられた銃が向けられていた先は、トーマス。
もう生きてはいない。
かがみこんだウリエの腕の中には、その胸に剣を突き立てられたシエルが横たわっている。
「セバス!シエルが!シエルが!」
「ぼっちゃん!」
みるみる血に染まる、ウリエの服とセバスチャンの白い手袋。
ウリエはセバスチャンにシエルを任せ、シエルを失ってしまうのではないかと言う不安で震える手を握りしめるばかり。
セバスチャンが、失礼します!とシエルを抱えて何処かへ走って行ってしまった時でさえ、全身が震え立ちあがる事も、遠ざかるセバスチャンの背中に視線を合わせることさえできなかった。
「ヴェッ…!」
込み上がってきた吐き気に耐えきれず、胃の中の物を吐き出してしまった。