As well be hanged for .....
第19章 勝利は未熟に 死は盲目に 後編
「ウリエ。平気か?」
「え、えぇ。大丈夫。」
キョトン。と立ち尽くしていたウリエの視界に、シエルの手が伸びてきて、ようやく我に返った。
剣を鞘に戻し念のため放らず、いつでも抜けるように、と左手に鞘を握った。
セバスチャンが襲撃犯を無理やりに立たせ、顔を覆っていたマスクを外す。
「トーマス・ロヴィンソン。」
「お、おじょう、さま…。」
許しを乞うような、愛おしい物を見るような目でトーマスはウリエだけを視界に入れる。
シエルはそんな彼の視界にわざと入るように、ウリエの肩を抱き寄せ少し後ろに庇う。
そして、いつも以上に冷たい視線でトーマスを見上げ鼻で笑う。
「大層な犬だな。」
「えぇ。人間にしては随分いい動きでしたよ。」
ようやくトーマスはシエルとセバスチャンを意識し、先ほどまでの穏やかな顔から一変し、まるで無様に唸る犬のように鼻に皺を寄せて呻いた。
「お嬢様は!お前たちの様な汚らわしい悪魔といるべきではない!旦那様やリエラ様と共に、天国で幸せに暮らす事こそが、幸せなのだ!」
「おや。随分勘がいいようですね。」
「お嬢様を天国に送り届けた暁には、お母様も送り届け、そしてこの!この汚らわしい悪魔の蔓延る世界から、すべてを抹消する!そうしなければ、救われない!」
「は!一体誰が救われないと言うんだ。」
「お嬢様だっ!」