As well be hanged for .....
第18章 勝利は未熟に 死は盲目に 前篇
そう言えば、シエルが悪魔になる前の事を全然知らない。
「ずるい。」
彼はシエルのすべてを知っているのだろう。
セバスチャンへの醜い嫉妬だ。
案外自分は独占欲が強い方なのかもしれない。とウリエは一人笑った。
ぷんすか。と子供のように怒った顔でこちらに戻ってきたシエル。
その後ろのセバスチャンは、意地の悪い笑みを浮かべこちらを見ていた。
「シエル?」
「トーマスだ。」
「は?」
「ファシルの劇はまだ終わってなかった。トーマスだ。奴がまだ動いている。」
そう言いながら足を止めることなくウリエの腕を掴み、強引に室内に戻っていく。
何もかもを置きっぱなしにしてきたリビングに向かって、ずんずんと足を進めるシエル。
ウリエはずっと引っ張られている訳にも行かず、早足のシエルに合わせ足を動かす。
「動いているって言ったって、もう後ろ盾はないのよ?」
「発射されたロケットミサイルが、いつまでも燃料の抜けた鉄の塊をくっつけて置くか?そんなものを尻にくっつけていたら、飛距離もスピードも落ちる。」
「ちょっと待って!じゃぁ、トーマスは今単独で、父の念願を…」
ウリエはそこまで言って足をとめた。
当然シエルも止まることになり、おい。とウリエを振り返った。
「父は…ううん。Rの欠けたあの集団の手口なら、女王の周辺をすべて片付けて、最後の最後に女王が一人になったところを狙うはず。」
「そうだ。トーマスが、今狙いを定めている女王の庭はここだ!」