As well be hanged for .....
第18章 勝利は未熟に 死は盲目に 前篇
シエルが「放漫」と言ったところで、ウリエの思考がピタリと止まった。
今の今まで慎重すぎるくらいに正体を隠して、証拠を隠滅し、石橋にひびが入りそうなほど慎重に渡り歩いて来ていたのに…。
「どうしていきなり、そんな大きなことをしたのかしら。」
シエルは眉を寄せ思案顔をするウリエに向けていた視線を、もう一度タブレットに戻し、バッキンガム宮殿爆破の時のダイアリーの写真を表示する。
爆発に使う爆破物の購入ルート、設置場所、爆破時間、爆破後の逃走ルート、当の指示が事細かに書かれている。
今までの事件の指示や作戦の書き出し方から見ても、特におかしい所はない。
しかし、逆を付けば。
唐突に表沙汰になるような事件を起こすのに、心境の変化がまったく書かれていない。
今までと同じく、冷静で緻密。
同じ過ぎる。
「このダイアリー。目くらましか?」
「目くらまし?」
「これだけ慎重な男だ。一つの場所に情報を集中させるのは安易じゃないか?」
「あのアジトは全部調べつくしたし、らしい物はすべて持ち帰ったわよ?」
「そこになければ見つけられない。」
シエルは、もうタブレットは必要ない。とスリープさせ、自分の思考に追い付いて来ていないウリエへ視線を向ける。
「トーマス・ロヴィンソンはどうした?」
「え?」