As well be hanged for .....
第18章 勝利は未熟に 死は盲目に 前篇
教会での一悶着のあと、ウリエは憑き物が落ちたのか、ただの空元気なのか判断が付かないが、とにかく元気だった。
毎日の稽古や、勉強に精を出し、シエルを連れ街に繰り出す。
フェンベルグ家の生業である、不動産業の自身の会社にも口を出すようになり、週刊誌に新たな当主として取り上げられる。
目に見えて活動的になったウリエを世間は邪推する。
姉は駆け落ちした、やら、母親は自殺したのではないか。など、良くない噂が大半を占めていた。
当の本人は、誰にも気が付かれないように、きれいさっぱりフェンベルグ家を解散し、親戚はいないため、財産はこの家に勤めていてくれたお手伝いさんたちに均等に配分する手続きを着々と進めていた。
「はぁ。なんだかんだ手続きが面倒ね。財産分与ぐらい勝手にさせてほしい物だわ。」
「法律と言うのはいつの時代も抜け道がある物でしたが、昨今ではそうもいかないんですね。」
「ほんと面倒。」
担当の弁護士には、当主になったウリエがまだ若いから。と言う理由で、規模縮小の手続きを進めている。
それから、もしもの事があった時には。という遺言を書き、お手伝いさんたち一人一人の名前を書いて、そこに均等な相続金額を書き残す。
姉は既に死亡届を出しているので、生死のわからない母にもきちんと財産がいきわたるように配慮し、世間の視線を少しだけ気にする。
「そう言えば、女王から何か連絡はあった?」
「いいえ。音沙汰無しですね。お嬢様のお母様の事も追伸で書き残しましたが、返事はありません。」
「うーん。頭が痛いわ。」
書斎でウリエとセバスチャンが向かい合わせに広いデスク座り、様々な紙を書き散らしている。
シエルは素知らぬ顔で書斎のソファーに寝転がり、携帯ゲーム機と格闘している。
一切二人を手伝う気はないようだ。