As well be hanged for .....
第4章 砂糖は多めに 塩は少なめに 前篇
昨夜のサロンでの惨殺事件は思惑通り、大麻常習者の幻覚妄想による殺人であったと片付けられた。
大麻に蒙昧だった民衆は目を覚まし、連日テレビや雑誌で取り上げられるそれらの危険性をようやく理解していく。
それに反し、女王は荒れ、もしかしたら議員の目に留ってもおかしくないほどの様々な薬を大量に購入していた。
番犬であるウリエ・フェンベルグには関係の無い事なのだろうが、ウリエの心に浮かんだ疑問は膨らむばかりだった。
セバスチャンならウリエの憂鬱をすぐさま払う事だろう。
シエルはここ数日目に見えて虚ろな彼女を見て思う。
やはり、自分が動いて彼女の憂鬱を晴らすべきなのだろうか。と。
「でしたら、命令なさればいいのですよ?」
「お前には関係ないだろう。」
「そうでしょうか?」
「あいつが僕に相談してくれば、お前に頼む。」
自分の主人も随分ひねくれていると思うが、あの少女もまた強情な方だ。とセバスチャンは笑う。
一言。一言でいいのだ。
シエルも、ウリエも。
ただ、助けて。と素直になればいい。
「では、お嬢様にも紅茶をいれて参りますので。」
「あぁ。」
シエルは2階の書斎の窓際に置かれた椅子に座って、テラスで風を楽しむウリエを見つめる。
その瞳はまるで、これから殺されるだろう獲物を慈しむよう。
そんな哀れな視線を送るシエルをセバスチャンは、面白そうに見つめるだけ。
ゆっくりと閉まる扉にセバスチャンの視界は奪われる。