As well be hanged for .....
第17章 成果は舞台に 喜劇は皿に 後篇
「それはない。光あるところに影が出来る。光がまとまり辺りを強く照らし出すなら、その脇には必ず深い影が存在する。調停する物が必要だ。」
「でも、その強くまとまる光は今この国には存在しない。ゲームで言う、リセットボタンを誰かが押さない限り。永遠に間違ったシナリオを演じ続ける羽目になる。」
「そのリセットボタンは私が押そうとしている。」
「ボタンを持っているのは貴方じゃないわ。女王よ。」
主人のいない場所で、飼い犬同士がワンワン吠えあったって意味はない。
まして、たかが飼い犬の分際で主人の首を違う方向へ向けさせることなど、あっていいはずがない。
「貴方も私も、シエルも。ただの犬なのよ。ご主人様に遊んでもらう事は出来ても、遊ばせる事は出来やしないわ。」
「……裏切る事は出来る。」
「首輪を食いちぎり、ご主人様に牙を向けた飼い犬はどうなると思う?」
ウリエの剣があるため、ファシルは身動きが取れない。
だが、真後ろにいるウリエには彼の表情が分かる。
歯を食いしばり、何処にもぶつけようもない自分の愚かさに怒り狂っている顔だ。
「殺処分よ。」
「私は犬ではないっ!断じて違う!理解し、思考し、実行できる!人間だ!」
「いいえ。フェンベルグの名を名乗っている時点で、私も貴方もリエラ姉さまも、女王の飼い犬よ。」
首輪を付けられていてもなお、誇り高くあろうとしている犬は美しい。
急に力を無くしたファシル。
体の震えもおさまり、弱々しい小さな声で、後ろにいる自分の娘へと語りかける。