As well be hanged for .....
第17章 成果は舞台に 喜劇は皿に 後篇
「お嬢様。黙らせました。」
「ありがとうセバス。これで静かに話ができる。」
こちらに戻ってくるセバスチャンと入れ替わるように、未だに抜き身の剣を右手に握ったままのウリエがファシルに近づく。
「おい!私を殺した所で、フェンベルグ家は永遠に女王の首輪からは逃れられないんだぞ!」
「貴方、本当に私の知っているファシル・フェンベルグ?」
「そうだと言っている!お前とリエラの父親だ!」
興奮か恐怖か、両足ががくがくと震え、座っているイスすらもカタカタと小刻みに揺れている気がする。
目を血走らせ、口の端に唾を溜め、両の手はイスの座板の両脇を握りしめている。
「ねぇ。お父様。」
落ち着いて聞いて。とウリエは優しく語りかける。
剣を背に隠し、開いている左手でファシルを落ち着かせるように肩をポンポンと叩く。
「時代は廻るの。後ろにいる彼は、ファントムハイヴ伯爵よ。」
「ファ、ファントムハイヴ?」
「えぇ。そう。面白い事もあるの。彼が必要とされていた時代からゆうに100年は経ってるわ。手となり足となり、目となり耳となり、鼻となり。」
ファシルの視線は目の前のウリエから、彼女の後方に座っているシエルに注がれる。
ウリエはファシルからシエルが良く見えるように、ファシルの後ろに移動する。
「でも、今じゃ。そのすべてを人間が作り出した科学が担っている。目も耳も鼻も。手足はさすがにまだ科学には無理ね。でも、いずれ、人間の番犬は必要なくなる。」
カチャ。と音を立てたのはウリエの持つ剣。
ギラリと古めかしくも鋭い光を放つそれは、迷うことなく父の首に当てられた。