As well be hanged for .....
第17章 成果は舞台に 喜劇は皿に 後篇
目の前にいるのは悪魔か?
不安と緊張でいっぱいだった胸は、いつの間にか憎悪と嫌悪で満たされ始めた。
父は人間ではない。
そう言いきれる。
女王の番犬としての誇りも、自分の父としての尊敬も一気に崩れさる。
「リエラ姉さまは人形ではないのよ?」
「私と母で作った人形だ。もちろんお前も。お前は妙に勘が鋭くて扱いにくかった。今もそう。」
「無知なだけ。無知だから知りたい。」
「その無知の知が鬱陶しかった。生涯をかけて、この国の女王に関わるすべてに復讐すると誓った私には、完璧な道具が欲しかったんだ。道具という言い方は正しくないな。忠実なる飼い犬を欲したんだ。お前は野犬だ。」
ぴ。と真っ直ぐ指を指す先にはウリエ。
ぐるぐると色んな事でいっぱいの頭を整理するべく、深呼吸をする。
父の言い分もわかる。
自分の両親が女王に殺され、番犬という使命と女王への復讐という二つの重りが天秤の上で揺れていたのだ。
その天秤は、復讐へ傾いた。
復讐心に駆られた猛犬は、忠実なる女王の番犬の皮を被って、その長い長い復讐劇を演じ続けている真っ最中なのだ。
一概に、それは間違いだ。と言えない自分もいる。
姉の事を無残に殺されたのだから、状況はほぼ同じと言える。
父と同じ重りを天秤に乗せていた。
「私の遊びを続けるために。君に協力してもらいたいんだ。」
ぐらぐらとどっちつかずに揺れ続ける天秤。
父の手をとって、母を見捨て、姉の復讐をするか。
番犬としての誇りを貫き、母を助け、姉の死を飲みこみ、父を殺すか。
急に息苦しくなって、ふと首に手を触れる。
とん。と指先に当たったのはサファイア。
シエル…。
ウリエは心の中で、恋しい彼の名を呼んだ。
「いつまでも野犬のままじゃ寂しいだろう。やはり犬は首輪をつけて立派な飼い主の言う事を聞いているべきだ。父の元に戻っておいで。」