As well be hanged for .....
第16章 成果は舞台に 喜劇は皿に 前篇
「どうぞ、ご案内いたします。」
扉の中から現れたのは、溌剌とした男。
バトラーと思しき恰好をしており、折り目正しく礼をする。
中に招き入れられたウリエ、それからシエル、セバスチャン。
外見と違って、中は美しい教会その物。
ごくごく普通の教会。
しかし、横の扉を抜けた先にはエレベーターがあり、それに乗って地下に向かう。
何処まで降りるのか?と質問を投げかけたくなるほど静かだ。
チン!とこぎみいい音を立てて開いた扉の先に、ウリエは目を疑った。
「私の…家?」
「こちらはフェンベルグ伯爵邸を細部まで再現して作ったものです。」
エレベーターを降りた先にはずらりとメイドやバトラー、スーツや黒服までもが両脇に並んでおり、ぱきっと礼をしている。
いつもなら、きょろきょろするな。とセバスチャンのお叱りが飛んできそうなものだが、今回ばかりはそうはいかなかった。
ウリエの視線はあちこちに注がれ、右を見ても左を見ても、フェンベルグ邸のメインホールなのだ。
間取り、壁紙、シャンデリア、床タイル、カーテン、暖炉、オブジェ、施されている金装飾。
「ただ今、旦那様をお呼びいたします。お待ちください。」
バトラーはきちんと礼をして、奥へと消えていく。
幼いころ、家族と楽しくダンスやパーティーをした光景が頭の中を駆ける。
少しだけ震えているような気がする指先が、腰の剣に触れた。
あの頃とは違う。
何も知らなかった無邪気だったあの頃とは。
「やぁ。久しぶりだな。」