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As well be hanged for .....

第16章 成果は舞台に 喜劇は皿に 前篇




腰に帯刀する古臭いデザインの重い剣は、十分ウリエの腕に馴染んでいる。
姉とともに父の跡を継ぐ日を夢見て、何度も何度も振るってきた。
この剣で、誇りを持って女王の庭を影から守り、立派だと思っていた父の後を継ぐ。

それは夢。
夢は夢で、現実は現実。

「シエル。準備はいい?」
「あぁ。」

爛々と月が輝く秋の夜。
少し肌寒い。
ウリエは深緑の外套を、シエルは紺色の外套をそれぞれ被ってセバスチャンの運転する車に乗り込む。
ウリエはサファイアのチョーカーをする事も忘れない。

静かな車内。
オレンジの街灯が、エメラルドグリーンの瞳を持つ少女の顔をいくつも過ぎる。
覚悟を決め、凛とした彼女の横顔。
本当に大丈夫なのだろうか、心の中では泣いているのではないだろうか。とシエルはたかが人間の少女に気が気ではなかった。

「到着いたしました。」

ガチャリ。とセバスチャンが恭しく扉を開け、シエルとウリエの降車を手伝う。
もうセバスチャンは何も言わない。
親の様な心配も、姑の様な小さな小言も。

ここから先は、今代の女王の番犬、ウリエ・フェンベルグの舞台だ。

シエルも彼女の横に並ぶことはない。
セバスチャンを脇に従え、一歩下がって事を見守り、自分の食事のために彼女が脅かされたと感じた時だけ手を出す。

ウリエは、カツ、カツ。とヒールを鳴らして背筋を伸ばし、錆びれ、廃れた重そうな教会の扉を二回ごんごんとノックする。

「……どちらさまでしょうか?」

扉の向こうから直接聞こえているのだろうか。
どこかのマイクから聞こえているのだろうか。
判断が付きにくい音声だった。

「ウリエ・フェンベルグ。伝言を頼んでおいたはずよ。」
「……少々お待ちを。」

老人か老婆かも分からないほどの嗄れ声。
〝少々″待たされ、ようやく扉が開いた。

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