As well be hanged for .....
第16章 成果は舞台に 喜劇は皿に 前篇
夢の中だろうか。
誰かにぎゅっと抱きしめられて暖かくて安心する。
ふと、意識が浮上しぱちりと開いた目の先に、紺色がかった黒髪が写りこむ。
何?と思った先に、胸に入ってくるのは甘い菓子の様なウリエの好きな匂い。
よく知っている匂い。
これは……
「シ、シエルっ?!何してるの!シエル?!」
慌てて身を引くが、背中に回されている彼の腕がそれを許してくれなかった。
「ちょっと、シエル!」
大きな声を出して、いつの間にか潜りこんでいたシエルの肩を揺さぶる。
しかし、一向に置きあがる気配が見えず、本当に眠っているのではないかと不安になった。
「シエル!起きなさいってば!」
悪魔は眠らないんじゃなかったの?と最近得た悪魔に関する知識が、頭の中を駆け廻る。
ぐらぐらと強めに揺さぶってようやく、うーん。と声をもらしたシエル。
ウリエは無理やりシエルの拘束を抜けだし、上体を起こす。
「おはよう。ウリエ。」
「おはようじゃないわよ!どうしてここにいるの!」
「つい、な。」
「何が、つい。よ!用事があったのなら起こしてくれればよかったのに!」
「お前の寝顔が間抜けでな。近くで拝んでやろうと思ったらいつの間にか寝ていた。」
ウリエは、シエルの馬鹿!と彼の肩を思い切り叩く。
そんな時、中を覗いてたのではないかと思うタイミングでノックが鳴る。
失礼します。とこちらの返事も待たずに入って来たセバスチャン。
その顔は少し楽しそうにニヤついている。
シエルは、きっと自分をからかいに来たのだろう。とウリエのベッドからそっと抜けだし、乱れた服の裾をはたく。