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As well be hanged for .....

第16章 成果は舞台に 喜劇は皿に 前篇




「特に話声の類いも聞こえませんでしたので、防音もしっかりした、かなり大掛かりなアジトかもしれませんね。」
「厄介だな。ウリエの伝言で、素直に奴が出てくれば別だが。」
「そうですね。大切な娘が宣戦布告してきたのですから、なにか反応はあると思いますが…」
「それだけ慎重で巧妙に姿を隠し、なおかつ計画的に大規模な犯行を犯している事を考えると、一筋縄ではいかないだろうな。」

とにかく、今はお嬢様のご起床を待ちましょう。とセバスチャンは言う。

問題は彼女の父親なのだ。
シエルやセバスチャンが出しゃばっていい問題ではない。

「随分昔と変わったな。」
「えぇ。」
「女王の番犬は、この時代にはもう必要ないんだな。」
「Envy is the companion of honor.(嫉妬は名声の伴侶)とも言いますしね。」
「…普通に、出る杭は打たれる。でいいだろうが。」

そうとも言います。とセバスチャンはクスクスと笑って、シエルが広げた本を一つ一つ丁寧に片づけていく。
シエルはイスへ背中を預け、深く息を吐く。

「光が強くなれば影が濃くなる。だが、今はどう見ても光が薄い。」
「えぇ。光が好んで影に足を踏み入れています。境目があいまいになれば、力の分担もままならなくなりますからね。今、強い力を持っているのは三つ。」
「女王、警察、これは政府。ウリエと僕ら番犬。ファシル・フェンベルグ率いる、Rの欠けた集団。」

今まで保たれていた均衡が崩れている。
崩したのは、誰?
トン、トン、トン、とイラついたようにデスクを指で叩くシエル。
だらしなく片肘を付いてこめかみを押さえている。

セバスチャンは机を叩くシエルの手を優しく押さえた。

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