As well be hanged for .....
第16章 成果は舞台に 喜劇は皿に 前篇
ごちそうさまでした。と食事を終えたウリエは、セバスチャンに手をひかれてリビングを出て行った。
シエルはため息とともに、目先の事ばかりに気を取られているようではまだまだ子供だ。と自分の未熟さに呆れる。
ウリエが部屋で寝入った頃。
シエルもシャワーを済ませ、自室でセバスチャンの報告を聞くべくイスに腰を降ろした。
「それで?セバスチャン。」
「はい。トーマスはしばらくロンドン郊外と市内をジグザクに走った後、今では誰も通わない、古い教会に入って行きました。そこがアジトか、もしくは、ファシル・フェンベルグの居場所でしょう。」
「中は?」
「さすがにそこまでは入れませんでした。」
「なぜ?」
セバスチャンはシエルの疑問に、携帯端末を取り出し、一枚の写真を表示させ、シエルの前に差し出す。
そこに映っているのは、件の古い教会。
しかし、その周りにはつい最近取り付けられたような防犯カメラが、堂々と教会の前の通りや教会に向けて配置されていた。
「最近では、そこかしこに防犯カメラが設置されています。ここら辺は未だに浮浪者やホームレスの溜まり場になっていますので、治安の事を考えて設置した。とも考えられますが、ちょっと不自然にも思えます。」
「……教会を取り壊せばいい話だからな。」
ほかにも数枚も写真があり、そのどれにもカメラやセンサーらしき物が写り込んでいる。
さすがのセバスチャンとはいえ、浮浪者の視線やカメラ、センサーの一切に映り込まず、明るくなり始めている時分に侵入する事は不可能だろう。
シエルはセバスチャンにそれを返す。