As well be hanged for .....
第16章 成果は舞台に 喜劇は皿に 前篇
そんなセバスチャンをシエルが優しく認める訳もなく、不機嫌を露わにして噛みつく。
「冗談はよせ。なにも掴んでいない訳がないだろう。さっさと言え。」
「おお、怖い。私の主人は、彼の主人より怖いですね。」
「なんだと。」
いつもならここらへんでウリエの制止が入るのだが、今日ばかりは疲れと眠気、それから目の前の美味しそうな朝食の所為か、虚ろな視線は焼きたてのバターロールに注がれていた。
「どうぞ、お召し上がりください。」
「いただきます。」
はしたないウリエに呆れながら、セバスチャンはウリエを注意せずシエルとじゃれあいを続ける。
「ぼっちゃんの細腕で振るわれるムチは痛くなさそうですし、そもそも扱えるかどうかも分かりません。」
「お前…いい加減にしろ。成果があったのかなかったのか言え。」
「そう、急かないでください。がっつきすぎるのは紳士ではありませんよ。」
「セバスチャン…。」
手にしている紅茶のカップを、今にもセバスチャンに向かって投げそうなシエル。
セバスチャンはそんなシエルを露も気にせず、ウリエに紅茶のおかわりを入れている。
シエルは、呑気に朝食を頬張っているウリエの間抜け面を見て、なぜセバスチャンが頑なに報告を遅らせようとしているのかようやく気が付いた。
はぁ。と肩の力を抜いて、ふんわりとバターの香りを漂わせるパンに噛みつく。
「ウリエ。」
「ん?」
「食べ終わったら、シャワーに入って寝ろ。」
「え?どうして?これから、アジトに行くんでしょう?」
「わかったか?」
「う、うん。」
ウリエに有無を言わせぬ命令口調。
セバスチャンはむくれた顔で自分を睨みつけてくるシエルに、声なく笑う。
目の下に隈を作って、頬にパンくずを付けて、髪がぼさぼさのウリエを休ませるためだ。
だからセバスチャンは言葉を濁し、報告を避けた。