As well be hanged for .....
第15章 答えは甘美に 制裁は憧れに 後編
ウリエが起きて来たのは夕方。
昼食も抜いて眠り続けるウリエを心配して、シエルが見に行った時だった。
「うぅ。不規則な生活の所為で、肌がぼろぼろ。」
「別に気にする事でもないだろ。」
「ホント、シエルってデリカシーないわよね。」
「は?別にお前は、化粧なんかしなくてもじゅうぶ……!」
「…ばか。」
ぼん!と顔を赤くして顔を逸らす二人。
ウリエの寝癖を整えに来ていたセバスチャンは、二人の初々しい様子を見て、クスクスと笑う。
喧嘩が少なくなった二人。
シエルとウリエの間で交わした契約が、終息を見せ始めていることに、薄々感づいていた。
思い悩む顔を、ちらほら見ることも多い。
セバスチャンはそんなシエルの心の機微を、意外な一面もあるのだと、面白おかしく見守る。
「仲がよろしい所申し訳ありませんが。夕食の準備が出来ますので、ダイニングにいらしてくださいね。」
「「よろしくない!」」
声を揃えて吠える小さな主たち。
セバスチャンはにやつく顔を隠すことなく、リビングを出る。
ふん。とシエルから顔を逸らすウリエ。
その横顔が妙に子供っぽくて、クスクスと笑いが漏れてしまった。
いつものように、なによ!と反撃に出ようとする彼女に、ずい。と顔を寄せ、次にウリエの顔が赤くなるのを待つ。
「な、によ!」
「ぷ。変な顔。」
「はぁ!?」
顔を赤くしながら、笑うのか困るのか怒るのか、迷いあぐねている彼女を笑う。
慌てふためく彼女の頬に、ちゅ。と軽くキスをして、ダイニングに行くために彼女の手を引く。
「シエルのばか。」
「ふん。なんとでもいえ。」
彼女が自分の掌で踊っている感覚に、なんとも言えない楽しい優越感。
こんな楽しい時も、そろそろ終幕を迎えるのかと思うと、心が曇る。
ウリエと別の約束がしたい。
そんなわがままが芽生えている事を、誰にも知られないようにシエルは笑った。