As well be hanged for .....
第3章 仕事は真面目に 趣味はほどほどに
電気自動車の車内はひどく静かで、ぽつりと呟いた彼女の言葉も大きく響く。
「『出来るだけ、手酷く。』」
また女王からの手紙を引っ張りだして、一部を音読するウリエに、隣に座るシエルは流れる外の景色から視線を巡らせ、バックミラーに映るセバスチャンを睨む。
「お嬢様。先ほどお話しされた通り、常習者の幻覚による錯乱。でよろしいのですね?」
「罪は表の常習者に被せれば問題ないでしょうし、女王の性格を鑑みてもそれぐらいの方がお喜びになるはずよ。」
そして、また静かな車内に戻る。
裏路地へ器用に入りこむ車幅ぎりぎりの黒いセダン。
目的地に着けば、虚ろな目をした人間達が次々と車に指紋を付けていく。
「これは。帰ったら洗車ですね。」
「明日の朝までには綺麗にしておけ。」
「承知いたしました。」
セバスチャンが運転席を降り、シエルとウリエの降車を手伝う。
主人二人が仲良く手をつなぐ様子は、仲の良い双子にしか見えない。
セバスチャンが扉を開ければ、一瞬で肺の奥まで染み込んでしまいそうな独特な甘い香り。
これを見越して目だけを残し、顔のほとんどを覆ってきたシエルとウリエ。
サロンの利用者が一斉にこちらを向いたところで、シエルがセバスチャンへ目配せし、ウリエが腰から、今ではテレビアニメでしかお目にかかれないギラリと光る剣を抜く。
「お嬢様。お先に。」
「えぇ。」
本物だとしたら少女の腕には相当重いはずなのに、ぶん!と軽々と振りまわし、妄想と快楽の沼に嵌る人間達を切り裂いていく。
5,6人が倒れてようやく事の次第を理解した人間達は、悲鳴を上げて入口へ逃げようとする者、雄叫びを上げて剣を握る少女へ向かってくる者、さまざまだ。
「後はお任せを。」
セバスチャンの赤い瞳がぎらりと明かりに反射し、素早くかつ指示通りに『出来るだけ、手酷く』人間達を皆殺しにして行く。