As well be hanged for .....
第3章 仕事は真面目に 趣味はほどほどに
支度くらい自分で出来る。と言ってあるのにセバスチャンはあくまでも執事らしくウリエの支度を済ませる。
炎を模したランプの明かりでぼうっと照らし出される、細いが筋肉質の美しい少女の身体。
するりするり、となすがままに着飾られていく少女をシエルは部屋の暗がりからじっと眼を逸らすことなく観察する。
「シエル。そんなに見ていて面白いの?」
「別に。」
シエルの感心事は自分の胸に浮かぶ契約印と、ウリエの胸に刻まれた契約印。
同じ場所に刻まれている二つの刻印は、暗がりで発光しているようにも窺えた。
自分とセバスチャンのとは少し違う。
いまだに消えずあり続けるシエルの右目の契約印。
見る事は出来ないが、鮮明に脳に焼き付いていて、いつでもハッキリと思い浮かべる事ができる。
「もう、襟ぐりの広い服は着られないわね。」
「そうですね。何着か服を入れ替えなければいけませんね。」
「シエルもだいぶ面倒な所にあるものね?」
「あぁ。」
愛おしそうに胸の契約印を撫でる様子は、とても16の少女には思えないほど大人びていた。
セバスチャンがシャツのボタンを閉めていく毎に視界から消える。
シエルはちゃんとそれが見えなくなるのを見届けて、座っていた椅子を立ちあがる。
揃いの上着に身を包んだシエルとウリエは、仲良く手をつないでセバスチャンの運転する車へと案内される。