As well be hanged for .....
第14章 答えは甘美に 制裁は憧れに 前篇
その日の夜。
屋敷中の電気が消され、パパラッチたちも疎らになった深夜。
真っ黒の衣装を身に纏ったウリエとシエル、それからいつもの服装のセバスチャンが裏口からこっそりと出掛ける。
車は使えない。バイクも自転車も。
だからと言って徒歩で行くにも限界があるため、最善策としてセバスチャンが二人を抱き抱え移動することになった。
セバスチャンの両腕には小さな主たちが、コアラのようにしがみついている。
動きにくいことこの上ないが、この際仕方ない。と半ば諦めでこの提案に乗った。
「トーマスの住所はこのあたりだわ。」
夕刻、警察のデータベースに勝手にアクセスし、抜き出していたトーマス・ロヴィンソンの住所をまず訪れる。
古い独身用のアパートで、いいとも悪いとも言いかねるが、シエルはハッキリ、悪い。と言いきっていた。
トーマスの部屋には薄く明かりが付いており、閉じられたカーテンの隙間から人影が動くのが時折見える。
「ご在宅の様ですね。」
「えぇ。」
路地の暗闇に三人身を寄せ隠れながら、張り込みを続ける事30分ほど。
ふ。と部屋の電気が消され人の動きが無くなった。
ウリエはセバスチャンの耳を頼ろうと、彼を見上げる。
「ベッドに入って、今日はもう眠るようですね。」
「…無駄足か。」
「一日目から成果が出るのはドラマだけよ。」
そろそろ秋めいてきた夜の風は、ウリエの指先を凍えさせる。
シエルはそんな彼女の手を握り、セバスチャンに、帰るぞ。と一言小さく言った。