As well be hanged for .....
第13章 閑話休題 2
「君、僕の犬にならないかい?」
「いぬ?」
突然の申し出にトーマスの頭の中には、ゴミ箱に鼻っ面を突っ込んで、無様によだれを垂らしながら、ギャワンギャワン!と自分たちを追いかけてくる、頭の悪そうな動物が、脳みそを駆け回った。
「そう。丁度ペットが欲しいと思っていたんだけど。どう?」
一人ぐらいの衣食住は確保できるしね。とまたもウインク。
どうしてこの紳士はこんな自分にここまでしてくれるんだろう。なんて疑問は湧かなかった。
トーマスは藁にもすがる思いで、紳士の誘いにコクコクと首が取れるぐらいに頭を振るだけ。
「いいこだ。じゃぁ、明日。またここに来るように。いいね。」
「は。はい!」
紳士は胸のポケットから分厚い札束をトーマスに渡し、藪をぎこちなく出て行った。
トーマスはその背中を見送って、握らされた札束に目を落とす。
ガチガチと震える全身。
こんな数のお金見たことなんてない。
トーマスは札束をズボンのゴムに押し込み、大慌てで教会の藪の中を後にした。
走って走って家族の待つ路地裏に飛び込み、段ボールで作った貧相で風が吹けば壊れてしまいそうな家に飛び込む。
「にいちゃん?」
「どこ行ってたのー!」
「さぼりやがって!」
足元に群がる弟妹たちが物凄く汚い物に見えた。