As well be hanged for .....
第13章 閑話休題 2
「ふむ…庭師ではないようだが、どうしてこんなところに?」
「す、すみません!すぐにここから消えます!」
「いやいや!待ってくれ!」
四つん這いのまま、ここへ侵入した時の小さな穴を目指したが、英国紳士に止められる。
「脅かすつもりはなかったんだ。本も返す。仕事を抜け出してきたのかな?よかったら私も一緒にさぼらせてくれ。」
英国紳士はよいしょ。と垣根を跨いでこちらに潜りこみ、薄汚いトーマスの横に腰を降ろす。
トーマスはその時ようやく、自分がどれだけ酷い恰好をしているかに気が行き、この狭い藪の中で出来るだけ彼から離れる。
「私も仕事をさぼりに来たんだ。」
話し相手ぐらいにはなってくれるだろう?と紳士はトーマスに向かってウインクをする。
にっこりと笑って投げられたウインクに、ドキリとするトーマス。
ぽい。と投げてよこされたトーマスが見つけたボロボロの本。
他人に見られて恥ずかしいという気持ちになったのは、この時が初めてだった。
「君、随分臭いけど、何の仕事しているの?ドブ掃除?」
「え、あの。仕事は…特に…。」
「ふぅん。じゃぁ、どうしてそんなに臭いの?あぁ!」
ポン!と紳士は手を打って、遠慮なく言い切る。
「路地裏のドブネズミか。」
笑って言い切る彼に、悪気なんてなさそうで、馬鹿にされていることすら忘れてしまった。
だから、トーマスはぽかん。と紳士を見る事しかできなかったし、自分の身なりを隠すことすらできなかった。
「……君、名前は?」
「ト!トーマス!トーマスです!」
「ほほう。自己紹介はきちんとできるのか。訛りも少なくていい。」
ふむふむ。と何かを考えだしてしまった紳士に、トーマスは次の言葉が出てくるまで、カチンと固まっている事しかできない。
自分なんかより、そこらにいる人より、身分は上だ。
ここで好印象を与える事が出来れば、今後何かいい事があるかもしれない。
頭ではわかっていても、手足は震えるし、言葉も出てこない。