As well be hanged for .....
第3章 仕事は真面目に 趣味はほどほどに
無駄に広いダイニングで、大理石の長いテーブルの端と端に座って二人だけの夕食を取る、隻眼の少年シエルとエメラルドグリーンの瞳の少女ウリエ。
ナイフやフォークが皿に当たる音だけを響かせる無言の食事は、セバスチャンの文句で中断された。
「ぼっちゃん。好き嫌いなさらないで、ちゃんとお食べなさい。」
「別に食べようが食べまいが必要ないだろ。僕の勝手だ。」
「いいえ。お嬢様の悪い手本になってしまいます。」
シエルは、横でお小言をもらすセバスチャンに、眉をひそめる。
そもそも悪魔には食事も睡眠も必要ないというのに、ウリエの教育に悪い。と言って悪魔であるシエルに、手本を強要するのは如何なものかと反論を試みるが、セバスチャンに勝てるはずもなく、素知らぬ顔の彼女に矛先を向けた。
「ウリエ。お前からもなんか言え。」
「セバス。」
「はい。お嬢様。」
「なんか。」
「……はい?」
「言ったわよ。なんかって。」
このへ理屈契約者!とシエルは隻眼の真紅の瞳を睨みつけるように細め、ウリエは澄まし顔でエメラルドグリーンの瞳をシエルに向けてにんまりと目を細める。
喧嘩するほど仲がいいとはよく言ったものだが、仲が良く見えるのはセバスチャンだけかもしれない。
「なによ。文句でもあるの?シエル。」
「ふん。別に。お前にも口うるさい執事が必要かと思っただけだ。」
「私、シエルみたいにお子様じゃないから。自分で出来るわ。もちろん好き嫌いもしなーい。」
もぐもぐ。と綺麗に皿の上の食事を平らげるウリエを見て、シエルはごくりと喉を鳴らす。