As well be hanged for .....
第12章 裏切りは手に 真実は足に 後編
キィ。と静かに開けた屋敷の正面玄関には誰の気配もなかった。
ウリエはしばらく歩けそうにないと言っていたから、ここまで来る事はないはず。
シエルはまだまだ残暑厳しい日に、着たくもない白衣に身を包み、病院に潜入していた。
姿形は若い研修生その物に見えるようはからってある。
狙いはこの病院に保管してある献血用の血液パック。
把握しておきたい。と嘘をつきすんなり見せてもらうと、やはりウリエの献血に使った血液型のパックのすべてに、彼女の父の名が書かれていた。
「あの、これ。どうして名前が?」
「あぁ。彼はここらの資産家で、数年前からずっと献血に来てくださっていた。もしものために、ってね。」
でも、この間亡くなってしまってねぇ。と、でっぷりと太った医者の説明を聞き流しながら、くすねて来た。
献血時のサインや精製の履歴なんかも一緒に拝借し、ぬるりと抜けだして慌てて屋敷に戻ってきた、と言う訳だ。
荷物の入ったバックパックを抱え、セバスチャンを呼びながら自室へ飛び込んだ。
デスクの上にそれらを広げ、以前ウリエの献血に使った血液と本当に同じ人物の物かを特定するためにセバスチャンの舌と嗅覚を頼る。