第2章 出会い
(どうしよう!)
(なんで、あんなこと口走ったの!?)
バクバク音を立てる胸を両手で押さえるが
依然治まりそうもない
ふたりとも顔が真っ赤に染まり
うつむき立ち向かう
沈黙を破ったのは先輩からだった
「はぁ~やっぱちゃんておもしろい」
「なんか少しちゃんと距離が近くなった気がする」
「先輩こそ、さっきから」
「いつもの軽い口調じゃなくなってますよ」
「あ~☆軽いって言うの禁止~☆!」
誤魔化したように笑った後
少し照れたように先輩は言う…
「ね、下の名前で呼んでよ」
「えっと、それは立場上…むずかしいかと…」
(あわわ、なんだか目が回ってきた)
「クスッ、やっぱおもしろいわ」
顔が火照る、耳がジンジン熱い、声が震える
自分の足元を見るので精一杯
前なんか向いたら恥ずかしさに倒れてしまいそう
先輩が、2人の間を縮める
「じゃあ、トオル先輩って呼ぶまで帰さないよ」
と、小さく呟いてわたしを先輩の腕の中にふわっと抱える
(いいにおい…柔軟剤の香りとお日様のようなにおい)
(先輩は意外とさみしがりなのかな、なんだかかわいい)
(・・・わたし、そばにいていいのかな)
(だれか、答えを教えて)
「ト……オルせん…ぱぃ…」
「ふふ、よくできました☆」
上を見上げると、先輩が
わたしの頭をくしゃっと撫でる
ちゅっ
おでこに先輩の唇が落とされる
わたしは足の力が入らなくなってガクンッと
その場に崩れ落ちた
先輩は慌ててわたしの様子を伺うが
無様な茹でタコのような顔を見て
すぐに笑顔になるトオル先輩だった