第2章 目覚め
闇夜の中、住宅地を駆け抜ける影が静まり返った家々の前を通り過ぎる
「琥珀、見つけ次第すぐに伝えろ。トラップの場合も同様だ」
「わかりました!」
太刀川さんの指示に従い、目に少し力を集中させると遠くまではっきりと見える
これが私のサイドエフェクト、強化視覚
彩度や少しの物体の動きなど、通常では感じ取れないものまで視覚で視ることができる
ランクとしては士郎同様に低い能力だが、使い方一つで戦況が変わる…と風間さんは言ってくれた
一面街頭と家と暗闇しかないこの時間帯に、人影が見えた
「あの人は…!」
「見つけたか!どこだ!」
「このまま真っ直ぐです!相手は…迅さん一人!例の黒トリガーはいないようです!」
「迅が?…へぇ」
ニヤリと笑う太刀川さんのライバル、迅さんは道路のど真ん中に立って微笑んでいた
…未来視のサイドエフェクトに黒トリガー、ボーダー屈指の強さを誇る迅さんでも、この量では太刀打ちできないのではないだろうか?
「なんで迅さん?」
「よお当真、冬島さんはどうした?」
「ウチの隊長は船酔いでダウンしてるよ」
そんなこれから戦うように見えない会話に、風間さんが一喝する、相変わらずかっこいい
「こんな所で待ち構えてたって事は、俺達の目的も分かってたってことだな?」
「ウチの後輩達を邪魔しにきたんでしょ?最近いい感じだから、邪魔しないでもらいたいんだけど」
「そりゃ無理だ…と言ったら?」
「その場合は仕方ない……実力派エリートとして、可愛い後輩を守らなきゃいけないなぁ」
太刀川さんと迅さんのやりとりを聞きながら、小南さん達の増援を警戒して一人でキョロキョロと目線を動かす
もっと目を集中させれば、すぐに見つけられるんだろうが…これ以上集中したら迅さんからの攻撃に対応できないだろう
どうやら迅さんはボーダーのルールに則り、クガユウマも隊員だから戦闘はだめだという意見らしい
しかし、それを太刀川さんが本部の正式入隊日を迎えてないため問題ないとはねのける
そして風間さんはあくまでも争いたくはないらしく、迅さんに引けと説得を試みるがそれも却下された
…残る道はただ一つだ