第7章 黒き刃
士郎の聴覚情報がリンクされると、知覚の8割を視覚で補う他の人々と比べ私達の隊は圧倒的に索敵能力に優れていた
勿論私の強化視覚のお陰もあるが、どうしても死角からの情報は士郎を頼らずにはいられない
『来ます』
ズズズ…と地面の下を何かが這うような音が聞こえ、士郎の言われた通りに動けば地面から生えてくる黒く尖った塊を避ける事に成功する
ひたすらその作業をしている状況だ
勿論、相手もこれは想定外だろう…顔に出やすい性格らしく、顔がイライラとしている。勿論色はそれ以上に怒りと焦りの色だ
…しかし、その色もすぐに冷静な色が混ざった
『相手の色が少し冷静になりました、気付いたかも』
『気付いてもどうもできないでしょ、初見じゃ無理だよ』
『警戒するに越した事はない、気を引き締めていけ』
『それにもう少し近づきたいですね…長時間の聴覚共有は酔ってくる』
『根性ないなぁ』
遼の意見も最もだ、士郎のように24時間この聴覚で過ごしていれば慣れるだろう
しかし、私達は突然体に5倍の音を入れているのだ。それはもう大音量でジェットコースターに乗って平衡感覚をおかしくしているような気分だ
『まだだ、相手がイラついて隙を見せるまでこのままでいく』
風間さんの指示通り、ここは我慢するしかないのだろう
すると、何か考えていた黒い角の男は顔をしかめて私達をにらんだ
すると、色んな場所からパキパキと地面や壁を伝って攻撃準備をしている音が聞こえてきたのだ
私は勿論目で壁などが少しだけ振動しているのが見える
つまり、平衡感覚が徐々に失われている上に視界が細かく揺れていると言う事だ
「う……」
『ノイズで混乱させる手か…流石に音には気付いたようだな』
『ふーん…原始人レベルですね。琥珀は大丈夫?うめき声なんてあげちゃってさ』
『視界が揺れる…ジェットコースター乗ってるみたい…』
『耐えろよー?今お前がやられたら戦力がた落ちだ』
『頑張る…ちょっと本気出せないけど許してください…』
私はこの戦い方に向いていない、でも聴覚共有のない状態だと狙われるのは必然だ
士郎程、正確な位置までは把握できないのだから
その数秒後、士郎の言った通りに避けると案の定攻撃を躱すことに成功するのだった