第6章 真昼の夜
家に帰ると、珍しく士郎が泊まると言い出したので家に上げ、夕飯を食べていた
「相変わらず女っ気のない部屋だよねー、もっと化粧品とか増やしたらどうなの?」
ジロジロと人の部屋を見ながら文句をつけてくる士郎にムッとしながら答える
「別にいいでしょー?化粧なんてしても学校で怒られるし、他はほぼボーダーにいるから化粧しないじゃん…でもね、この間匂いが気に入った香水買ったの!可愛いでしょ!」
棚の上に飾ってあるピンク色の香水を指さし、ちょっとでも女らしさを主張するとふいに士郎が私の首に顔を近づけ匂いを嗅いできた
「…琥珀には勿体ないんじゃない?この甘ったるい匂い」
「えーそう?花の匂いでいいかんじじゃない?」
「僕はもっと柑橘系の方が似合うと思う」
「士郎がポジティブな事言うなんて珍しい」
「言っちゃ悪いわけ?別に琥珀が近くで甘ったるい匂い振り撒いたら迷惑ってだけ」
フンッとそっぽを向きながらご飯を食べ終える士郎を見ながら話を続けた
「じゃあ今度は柑橘系の香水にしてみるね」
「…琥珀がマシなの選べたらの話だけどね」
また悪態をつく士郎と喧嘩のようなじゃれあいをしながらご飯を片づけ順番にお風呂に入ると、布団をリビングに敷き詰めた
「今日も一日長かったなー」
「学校だったからでしょ、ほら明日もだから寝るよ」
「…ねぇ士郎、いつ敵くるかな?」
「さぁね、迅さんでもわからないらしいし誰もわからないよ」
「また…街壊れちゃうのかなぁ」
ふと思い出すその記憶を隠すように口元まで布団をあげると、ため息をつきながら隣に寝転んでいるそいつは乱暴に頭を撫でてきた
「そうならない為に僕達が隊員なんでしょ?」
「そうだけど…またあんな事があったら……」
脳裏に甦る後悔の風景に目頭が熱くなる
弱気になったときはいつも馬鹿にしてくる士郎も、あの日についてはからかってこない
静かに頭を撫で続けてくる士郎の手に安心し、少しずつ夢が私を迎える準備を始めてきた
「ありがと…」
小さな声で言いながら私は瞼を閉じた
「…どういたしまして」
僕の耳がいいことなんて、こいつは忘れているんだろう
そう考えながら顔に残った雫をふき取り、眠りについた