第2章 目覚め
ボフンッとやわらかいベッドの上に落ちると、少し頭を打った
ベイルアウトが嫌いな理由の一つがこれ、意外にベッドが固いということだ
負けた事が悔しくて歯を食いしばりながら起き上がると、皆が迎えてくれた
「おかえり、琥珀ちゃん」
「…ただいま、歌歩ちゃん」
「琥珀ちゃんは頑張った方だと思うわよ、今回の任務は失敗だけど、次は頑張りましょ。ね?」
同い年とは思えないようなお母さんっぷりについ甘えたくなる
ギュッと歌歩ちゃんに抱きしめられれば、ついつい目から涙が溢れてくる
それに気付いて、ハンカチを渡してくれる遼に小さな声でお礼を言い、思いきり涙と鼻を拭くと苦笑いされた
遠目に見ている風間さんが、ゆっくりと口を開いた
「琥珀」
「…はい」
「お前は負けず嫌いだ、そこは俺もかっている。だが、負けず嫌いと無謀の戦いを挑むのは違うぞ」
「ごめんなさい…」
背中を歌歩ちゃんに撫でられながら、風間さんと向き合うと、珍しく風間さんが少し笑った
「だが、その気持ち…俺は嫌いではない。実戦でその気持ちを忘れないようにしろ」
「はい!」
そう言って出ていく風間さんの背中を見て、なんだかんだでいつも心配しているのよ?と小声で歌歩ちゃんが教えてくれた
顔にも言葉にも出さない私の隊長は、いつも隊員を心配してくれるいい隊長だ
残りの隊員は、そんな私達とは全く違う顔をしていた
「琥珀、風間さんに迷惑かけるなって何度言ったらわかるの?」
「で、でも風間さん許してくれたじゃん」
「幸せな脳みそしてるよねーホント。実戦であんなことされたら、捕虜にされたりする可能性高いのわからない?」
「それはその…」
「いい加減、その単純脳どうにかしなよ」
「菊地原君、そこまで言わなくても…」
歌歩ちゃんに咎められ、シン…と静まる隊室
「ちょっと、出てくる」
「え?琥珀ちゃん?」
「私は皆みたいに退けって言われて退けるほど頭よくない…でも、退けって言われない位強くなることはできる。もう迷惑はかけないよ」
強がってそう言うと、ポケットに入っている財布を握りしめて自販機を目指して歩いて行った