第7章 レクイエム
潤の部屋を飛び出してからのことは、正直あまり覚えていない。
自分がどこをどう歩いて来たのかすら、記憶にない。
気付いたら自分の部屋にいた。
普段は仕事柄あまり深酒なんてしない俺が、それも滅多に口にすることのないウイスキーを浴びるように飲んだ。
流石に二日酔いは避けられず、仕事が休みで良かった…と、安堵の溜息を吐いた。
着込んだままのスーツを脱ぎ、シャワーを浴びると、冷えたベッドに潜り込み、目を閉じた。
眠ろう…
今はただただ眠って、忘れよう…
眠ればきっと忘れられる
忘れてしまえばいい
あの淫靡な光景も、
そしてこの手に感じたあの人の体温も
忘れるんだ…
一度油断したら零れ出そうになる涙を、唇を噛んで耐えた。
目を閉じれば浮かぶ、淫らに喘ぐあの人の姿を、瞼を固く閉じて振り払った。
漸く深い眠りに落ちた時には、窓のはすっかり日が昇り、もう新しい朝を迎えていた。