第7章 レクイエム
そこに横たわるのは、明らかに行為の後と思われる、性に塗れた身体。
どれだけ汚れても、決して穢れることのない身体。
その身体を、どれ程求めたか分からない。
触れちゃいけない…
一度触れてしまったら、二度と引き返せなくなる。
頭の中で鳴り響く警鐘。
同時に早鐘のように激しく打ち付ける鼓動。
煩い!
煩い煩い!!
全てを振り払うように、そっと頬に触れた。
指先に感じる温もりが、この人がここに存在していることを証明してくれる。
「智くん…」
あの日から…別れを告げたあの日から、幾度となく呼び続けた名前。
すっかり枯れたと思っていた涙が溢れた。
耐えきれず零れた落ちた涙が俺に告げる。
俺はまだ泣ける
俺はまだ彼を愛してる
と…