第1章 アヴェ・マリア
やがて俺達を乗せたエレベーターは、チンと音を鳴らしてビル最上階に停まった。
ゆっくりドアが開いた先にあったのは、一面を大理石で埋められたモノトーン広いの空間。
松潤は驚きのあまり言葉も出ない俺に、プライベートルームだとサラッと言ってのけた。
俺のボロアパートの部屋何個分あんだよ…
手を引かれるまま奥へ進むと、これまた一面の窓。
そこに立って下を見下ろすと、思いの外高い場所にいることに足が鋤くんだ。
「ちょっとそこ座って待ってて?」
促されて革張りの黒いソファーに腰をおろした。
松潤は奥のキッチンへと向かうと、馴れた手付きで料理を始めた。
「松潤、料理なんかするんだ?」
「簡単な物ならね…」
何をやっても様になる男だ。