第6章 愛の悲しみ
智が俺のビルに越して来てからというもの、俺の生活は一変した。
デザインのアイディアを智がくれる事もあった。
一度は画家を目指しただけあって、一つ一つが的確で洗練された感覚を智は持ち合わせていた。
時には意見がぶつかる時もあったが、智と二人でデザインを作り出す作業は、とても楽しく充実した時間だった。
勿論、お互いのプライベートな時間も尊重した。
夜になれば俺のベッドで、抱き合って眠った。
それは穏やかで、幸せな時間だった。
少なくとも俺にとっては…
その日智は俺の下でいつになく乱れた。
俺の首に腕を回して縋る姿は、この上なく淫靡で綺麗だった。
智が何度目かの熱を放った時、俺のスマホが震えた。
マナーモードだったためか、智は気付いていない様子だった。
液晶を確認すると、そこには翔さんの名前が表示されていた。
「智、ちょっと仕事の電話だから…」
うん、と頷くのを確認して俺は通話のマークをタップした。
智は声が漏れないように、手で口を塞いだ。
「もしもし?」
「あ、ごめんな、こんな時間に…」
遠慮気味な翔さんの声。
「FAX届いたから。後は最終チェックだけなんだけど…」
淡々と語る翔さんは、きっと今ここに智がいるなんて、思いもしないんだろうな…
俺の中で翔さんに対する苛虐心が沸き起こった。