第6章 愛の悲しみ
“嘘”で終わらせるつもりだった。
相手の真意を探るために吐いた“嘘“
それが現実となるとは夢にも思わなかった。
あの日俺が吐いた“嘘“は、生真面目な性格が故に真実として受け止められた。
もしもあの場で、彼が本心を曝け出していたら…
いや、彼に限ってそれは絶対ない。
それだけは言いきれる。
だからこそ俺は彼に“嘘”を吐いたんだ。
結果、智は俺のモノになった。
でもそれは、心を持たないの人形みたいな物で…それでも良いと思っていた。
傍に居てさえくれれば、何も望まない。
たとえ振り向いてくれなくても、それでいい…
そう思っていた。
だけど人間ってのは欲深い生き物なんだ。
全てをこの手に入れたくなる。
欲しい…
心も…
身体も…
智の全てが欲しい。