第5章 月光
「あぁ、もうしない。…それより智はいいの?」
潤の息が首筋にかかる。
「何が?」
「…翔さんのこと、本当にいいのか?」
「うん…。だって結婚すんだろ?」
えっ、って俺の身体を引き離し、驚いた様子で潤の瞳が見開かれた。
「なんで知ってんの?」
コイツも知ってたんだ…
俺だけが知らなかった、ってことか…
そう思ったら、全てが馬鹿馬鹿しく思えて、
「翔くんにはさ、誰よりも幸せになって欲しいからさ…」
ありきたりの台詞を吐き出すことで、“ふざけんな”って叫びたい衝動を落ち着かせた。
「それに俺はお前を選んだんだ。それでよくね?」
潤の頬に手を添えると、潤の顔が照れたように綻んだ。
「キス…もう一回してもいい?」
「だから、聞くなってそんなこ……ん!」
言い終える前に唇を塞がれた。
触れるだけのキスじゃない…
角度を変えながら、貪るように激しいキス。
「ん…ふ…はぁ…」
息苦しさに堪らず開いた唇の隙間から差し込まれる潤の舌。
忙しく動き回る舌が、俺の舌を探し当て絡め取る。
もう嫌悪感なんてなかった。
小さな震えは、甘い痺れに変わり、脳を刺激した。
どうしてだろう…
こうして抱き締められることに、とても安心する。