第5章 月光
「それでもいい。アンタが俺のモノになるんなら。
…心なんていらない…」
そう言った松潤の声が微かに震えていた。
俺を真っ直ぐ見つめる瞳は、心なしか潤んでいた。
「ねぇ、キス…していい?」
何を今更と思いながらも、小さく頷いてみせると、ゆっくりお互いの唇が重なった。
触れるだけのキスを交わすと、何だか照れくさくなって、俺達は俯いてしまった。
「あ、そ、そうだ、ほら、松潤、仕事してたんじゃ…」
動揺を隠そうと、身を起こした俺を、松潤の腕が制する。
「仕事なんかどうでもいい。今はアンタ…智とこうしていたい。
…それに“松潤”じゃないよ? “潤”だ」
潤の手が額にかかった前髪を掻き上げ、そこに唇が触れる。
「い、言っとくけどなぁ、俺お前のこと許したわけじゃないからな?」
潤の首に両腕を回し、肩に顔を埋めた。
「も、あんな真似すんな。相葉ちゃんが苦しめば、和が悲しむ…。
俺、見たくねぇから…悲しい顔…」
誰よりも優しい相葉ちゃんだから、きっと辛かったと思う。
でも、和はそれ以上に傷ついて、悲しい思いをしたに違いない。
相葉ちゃんがしたことは、和に対する裏切り以外の何ものでもないから。