第5章 月光
「なに? 緊張してんの?」
緊張?
確かにそうかもしれないな…
すっかり俯いてしまった俺を、松潤が下から覗き込んだ。
ねっとりと絡むような視線に耐えきれず、
「や、やっぱ帰る!」
勢い良く立ち上がった。
「逃げんなよ」
踏み出そうとした瞬間、松潤の手が俺の手を掴み、引っ張られるように俺の身体は再びソファに沈み、そのまま松潤の腕の中に抱き寄せられた。
心臓の音が煩い…
「逃げないで…俺から、逃げないで。
………好きなんだ、アンタのことが…ずっと」
背中から回された腕に力が込められる。
その手は少しだけ震えていて…
「知ってたよ?」
松潤の身体がピクッと反応する。
「知ってたよ、お前の気持ち」
「そっか…だったら話し早いね?」
松潤の手が俺の顎にかかり振り向かせると、肩越しに視線がぶつかった。
「俺と付き合って?」
真っ直ぐに見つめてくる視線を逸らすことが出来ない。
答えはここに来る前から決まっていた。
「いいよ…、付き合ってやっても。でも、心はやれねぇ。それでもいいなら、付き合ってやる」
心は…
心だけは、誰にも渡せない。
俺の心は、翔くんへの想いと一緒に、胸の奥深くにしまい込んだから…