第5章 月光
グラスにウォーターサーバーから水を注ぎ、綺麗に整頓されたデスクの引き出しを探り、小さな箱から中身を取り出すと、それを俺に差し出した。
「な、なんだよ、コレ?」
「薬だよ?」
そんなの見りゃ分かる。
あの晩、多分俺は薬で眠らされ、薬によって望みもしない快楽を与えられた。
そう思ったら不安が過ぎった。
「安心しなよ、ただの解熱剤だから」
俺の不安を察したのか、松潤が呆れ口調で言った。
「なんなら飲ませてやろうか? 口移しで…」
「いや、いい! 自分で飲む」
松潤の手から薬を奪う様に取り上げ、口に放り込み、グラスの水を一気に飲み干した。
冷たい水が熱を冷ます様に、全身に染み渡った。
「一応熱測っとけ」
グラスと交換に体温計を渡された。
脇に挟み、暫くじっと待つと、ピピッと音が鳴った。
38・2度。
思ったよりも高かった。
「こんな熱あんのに、わざわざ俺に会いに来てくれたの? それとも恨み言でも言いに来た?」
「どっちもだ」
フッと笑って、松潤が俺の横に腰を下ろした。
身体がビクッと硬直する。