• テキストサイズ

Pentagon【気象系BL】

第5章 月光


「潤、いる?」

レジカウンターに立つ女性店員に声をかけた。

女性店員は一瞬怪訝そうな表情を見せたが、再び笑顔の仮面を被った。

「失礼ですがお客様は…?」

「大野って言ってもらえれば通じると思うんで…」

お待ちください、と言って女性店員は内線電話を掛けた。

電話を切った女性店員は、“こちらへどうぞ”と店の奥へ誘った。

エレベーターに一緒に乗り込むと、ビルの最上階行きのボタンを押した。

シンと静まり返った箱の中で、俺の心臓は女性店員に聞こえるんじゃないか、ってぐらいドクドクと激しく鼓動していた。

やがて俺を乗せた箱はチンと音を立てて止まり、ゆっくりドアが開いた。

そこに広がるのは、つい最近見たばかりの光景。

違うのは、一面の窓から見える景色だけ。

箱から降りた俺は、女性店員に促されるまま、リビングを抜けた先のドアの前に立った。

女性店員がドアをノックし、

「お連れしました」

と、声をかけた。

「どうぞ」

扉一枚隔てた向こう側から、低目の声が返ってきた。

俺に向かって軽く会釈をすると、女性店員は今来た道を戻って行った。

激しく鼓動する心臓をなんとか落ち着けたくて、深呼吸を一つした。
/ 297ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp